自動車運転者の監督指導で改善基準告示違反53.1%|EC荷主が点検する荷待ち・附帯作業と配送費【2026年8月】
- EC・物流インサイト
この記事は約15分で読めます
「運賃がまた上がる」という通知を受け取ったとき、その背景にある数字を見たことがあるでしょうか。厚生労働省は2026年8月6日、全国の労働基準監督署等が令和7年にトラック・バス・タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導と送検の状況を公表しました。監督指導を受けた4,123事業場のうち労働基準関係法令違反が81.2%、ドライバー特有の拘束時間ルールである改善基準告示の違反が53.1%で見つかっています。この数字は運送会社の話に見えて、実はEC事業者の側にも直結します。長時間の荷待ちや附帯作業は荷主が発生させているためで、行政も発着荷主への要請という形で荷主側に働きかけています。この記事では公表結果を読み解き、発送代行を使うかどうかにかかわらずEC事業者が点検すべき論点を整理します。
2026年8月6日に公表された監督指導の結果
改善基準告示とはどんなルールか
まず用語を押さえます。改善基準告示は正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)で、トラックなどの運転者について拘束時間・休息期間・運転時間の上限を定めたものです。労働基準法が一般の労働者に定める規制とは別に、長距離運行という業務特性を踏まえてドライバー向けに設けられている基準です。EC事業者にとって重要なのは、この基準が「1台のトラックが1日に動ける時間」の天井を決めているという点です。天井が下がれば1便で運べる量が減り、必要な便数と人員が増え、それは運賃に反映されます。物流の基本用語や全体像は物流の基礎から確認できます。
4,123事業場のうち81.2%で法令違反
公表された令和7年の実績を見ると、監督指導(立入調査)を実施した事業場は4,123事業場でした。このうち労働基準関係法令違反が認められたのは3,346事業場(81.2%)、改善基準告示違反が認められたのは2,188事業場(53.1%)です。さらに、重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検された件数は67件にのぼります。立入調査を受けた事業場の8割超で法令違反が見つかり、半数超でドライバー固有の拘束時間ルールにも違反があったという結果です。
監督指導を実施した事業場は4,123事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、3,346事業場(81.2%)。また、改善基準告示違反が認められたのは、2,188事業場(53.1%)。
出典:厚生労働省「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況を公表します」(令和8年8月6日)
違反の内訳から見える現場の実態
労働基準関係法令違反の中身
違反の内訳を見ると、現場で何が起きているかが具体的に見えてきます。主な労働基準関係法令違反事項は、労働時間(39.3%)、割増賃金の支払(19.7%)、労働時間の状況の把握(6.3%)の順でした。最多の「労働時間」は、法定の枠を超えて働かせていた類型です。2番目の「割増賃金の支払」は、働かせた分の残業代が正しく払われていなかったことを意味します。3番目の「労働時間の状況の把握」は、そもそも何時間働いたかを客観的に記録できていないという状態で、上の2つの温床にもなります。
改善基準告示違反の中身
ドライバー固有の基準についても内訳が示されています。主な改善基準告示違反事項は、最大拘束時間(40.2%)、休息期間(28.3%)、総拘束時間(27.4%)でした。最大拘束時間と総拘束時間は、いずれも「拘束されている時間の長さ」に関する違反です。拘束時間には運転していない時間も含まれ、荷積み・荷卸しの待機、いわゆる荷待ちもここに入ります。休息期間の違反は、次の運行までにまとまった休みを取れていないことを示します。つまり違反の中心は「走りすぎ」よりも「拘束されすぎ」にあり、その拘束時間を膨らませている要因の一つが荷主側の段取りです。
| 違反の区分 | 主な違反事項 | 割合 | 荷主側の関与 |
|---|---|---|---|
| 労働基準関係法令 | 労働時間 | 39.3% | 間接的(配送量・時間指定) |
| 労働基準関係法令 | 割増賃金の支払 | 19.7% | 小さい(運送会社の労務管理) |
| 労働基準関係法令 | 労働時間の状況の把握 | 6.3% | 小さい(運送会社の労務管理) |
| 改善基準告示 | 最大拘束時間 | 40.2% | 大きい(荷待ち・附帯作業) |
| 改善基準告示 | 休息期間 | 28.3% | 中程度(着時刻の指定) |
| 改善基準告示 | 総拘束時間 | 27.4% | 大きい(荷待ち・附帯作業) |
なぜEC事業者(荷主)に関係するのか
荷主特別対策チームによる要請という仕組み
この結果が荷主にとって他人事でないのは、行政が荷主側にも直接働きかける仕組みを持っているからです。公表資料には、令和4年12月から、トラック運転者の長時間労働の是正のため、都道府県労働局に「荷主特別対策チーム」を編成し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないこと等について発着荷主等に対して要請する取組を行っていると記されています。つまり運送会社を指導するだけでなく、荷待ちを生んでいる側にも改善を求める体制が4年近く前から動いているということです。
令和4年12月から、トラック運転者の長時間労働の是正のため、都道府県労働局に「荷主特別対策チーム」を編成し、長時間の恒常的な荷待ちを発生させないこと等について、発着荷主等に対して要請する取組も行っています。
出典:厚生労働省「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況を公表します」(令和8年8月6日)
荷主に対する規制はこの1本ではない
荷主側への働きかけは、労働行政だけの動きではありません。独占禁止法の枠組みでは公正取引委員会が物流特殊指定を改正し、2027年4月施行で着荷主も規制の対象に加わります。取引条件の適正化については公正取引委員会の取引適正化に関する解説が基本的な考え方をまとめています。物流効率化法では特定荷主の中長期計画の提出が求められ、貨物自動車運送事業法の改正では白トラ規制や下請制限が段階的に効いてきます。改正物流効率化法の全面施行と合わせて見ると、荷主が発注のしかたを変えないと成り立たないという方向で制度が揃ってきていることがわかります。年度単位の制度変更は制度変更・コスト増カレンダーで追えます。
荷待ちと附帯作業が拘束時間を押し上げる
実務に落とすと、荷主が拘束時間を押し上げてしまう典型は2つです。1つは荷待ちで、出荷準備が終わっていない、伝票が揃っていない、バースが空いていないといった理由でドライバーを待たせる状態です。もう1つは附帯作業で、契約上は運送だけを頼んでいるはずが、実際には荷積み・荷卸し、仕分け、棚入れまでドライバーが担っているケースです。どちらも拘束時間に算入されるため、最大拘束時間・総拘束時間の違反に直結します。物流2024年問題から2年が経った現場の変化を振り返っても、この2点が改善の中心に置かれてきました。
配送費への波及をどう読むか
1台・1人が運べる量に上限がかかる
拘束時間の是正が進むと、1台のトラックが1日に回れる件数は減ります。同じ荷物量を運ぶには便数か車両か人員を増やす必要があり、そのコストは運賃に乗ります。宅配運賃が毎年上がる構造の根っこはここにあり、単発の値上げではなく継続的な単価上昇として現れます。国土交通省では運賃の原価を定義する議論も進んでおり、適正原価の設定に向けた検討が動き出しています。荷主・物流事業者に求められる対応の全体像は国土交通省の物流政策のページで体系的に確認できます。
供給側は幹線と拠点の効率化で応じている
運送事業者側も手をこまねいているわけではありません。幹線輸送の集約や大型拠点の稼働で、限られた拘束時間のなかで運べる量を増やす動きが続いています。佐川急便の関東ハブセンターの本格稼働はその一例で、SGホールディングスの公式リリースに取組の概要が示されています。ヤマトホールディングスの第1四半期決算でも価格適正化による改善が示され、宅配大手が単価と物量のバランスを取り直している局面であることが読み取れます。EC側から見れば、値上げは交渉で押し返す対象ではなく、前提条件として設計に織り込むものになりつつあります。
サイズと同梱で単価を吸収する
単価が上がる前提で利益を守る手段は、送る量ではなく送り方の側にあります。運賃はサイズ区分で階段状に決まるため、あと1cmで1段上がると利益が消えます。サイズ区分の階段構造を理解して梱包を設計し、1配送あたりの粗利密度を上げるのが基本線です。送料設定と梱包コストの計算や送料設定ガイドも、単価上昇局面での見直しに使えます。
EC荷主側で点検できること
荷待ちと附帯作業は、荷主側の段取りでかなり減らせます。以下は自社の出荷運用を見ればすぐ判断できる項目です。
荷待ちを生まない出荷側の段取り
集荷時刻に対して荷物が揃っていない状態が続くと、そのままドライバーの待機時間になります。受注の締め時間を守れる作業量に設定し、出荷検品と伝票発行を集荷前に完了させる。この基本を崩さないことが、そのまま拘束時間の短縮につながります。出荷が締め時間に間に合わないのが常態化しているなら、体制の側に原因があります。年間の出荷波動を把握して繁忙期の作業量を前倒しし、出荷リードタイムを安定させる設計が必要です。
| 点検項目 | 望ましい状態 | 放置したときの影響 |
|---|---|---|
| 受注の締め時間 | 実際に処理できる作業量に合わせて設定 | 集荷時刻に荷物が揃わず荷待ちが発生 |
| 出荷検品・伝票発行 | 集荷前に完了している | ドライバーの待機時間が拘束時間に加算 |
| 附帯作業の範囲 | 契約に明記し対価を支払っている | 慣習で担わせる状態が取引上の問題に |
| 出荷波動の平準化 | 繁忙期の作業を前倒しできている | ピーク日に締め時間を守れず遅延 |
| 梱包サイズの設計 | サイズ区分の境目を意識している | 1cm差で運賃が1段上がり利益が消える |
附帯作業は契約で切り分ける
ドライバーに荷積み・荷卸しや仕分けを頼んでいる場合、それが契約に書かれているか、対価が支払われているかを確認します。書かれていない作業を慣習で担わせている状態は、拘束時間の増加だけでなく取引上の問題にもつながります。公取委による荷主への立入調査もこうした点を見ています。契約の棚卸しは物流契約見直しチェックリストに沿って進められます。
出荷そのものを外部化するという解き方
自社倉庫から出荷している事業者にとって、荷待ちと附帯作業の管理は本業の外にある負担です。出荷工程を発送代行に委ねれば、集荷対応やバース運用は委託先の設計に乗ることになり、荷主として問われる論点も整理されます。STOCKCREWは初期費用・固定費0円、導入は最短7日、基本配送料は全国一律260円〜で、出荷はヤマト運輸・佐川急便を中心に行っています。2,200社以上の導入実績とAMR110台を稼働させた倉庫で、複数荷主の波動をならしながら集荷時刻に間に合う体制を組んでいます。切り替え水準の試算は出荷件数別の損益分岐シミュレーション、料金の全体像は料金表で確認できます。対応範囲はSTOCKCREW完全ガイドにまとめています。
まとめ:運賃は労働時間の裏返しである
厚生労働省が2026年8月6日に公表した令和7年の結果では、自動車運転者を使用する4,123事業場への監督指導のうち、労働基準関係法令違反が3,346事業場(81.2%)、改善基準告示違反が2,188事業場(53.1%)で認められ、送検は67件でした。改善基準告示違反の主な内訳は最大拘束時間40.2%、休息期間28.3%、総拘束時間27.4%と、いずれも拘束時間に関わるものです。拘束時間を膨らませる荷待ちと附帯作業は荷主側が生んでいるため、令和4年12月から編成された荷主特別対策チームが発着荷主等に要請を行っています。EC事業者がすべきことは、締め時間を守れる作業量の設定、集荷前の出荷完了、附帯作業の契約への明記、そしてサイズ設計による単価吸収です。自社での管理が負担になっているなら、出荷工程を発送代行に移す判断も現実的です。個別のご相談はお問い合わせ、費用感の把握は資料ダウンロードから承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 改善基準告示とは何ですか?
正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)で、トラックなどの運転者について拘束時間・休息期間・運転時間の上限を定めたものです。労働基準法の一般的な規制とは別に、長距離運行という業務特性を踏まえて設けられています。1台のトラックが1日に動ける時間の天井を決めるため、EC事業者の配送費にも影響します。
Q. 令和7年の監督指導の結果はどのような内容でしたか?
監督指導を実施した4,123事業場のうち、労働基準関係法令違反が3,346事業場(81.2%)、改善基準告示違反が2,188事業場(53.1%)で認められました。重大・悪質な労働基準関係法令違反による送検は67件です。主な労働基準関係法令違反は労働時間39.3%、割増賃金の支払19.7%、労働時間の状況の把握6.3%でした。
Q. 改善基準告示違反はどの項目が多いのですか?
主な違反事項は最大拘束時間が40.2%、休息期間が28.3%、総拘束時間が27.4%です。上位3項目はいずれも拘束時間に関わるもので、運転していない待機時間も拘束時間に算入されます。荷積み・荷卸しの待機、いわゆる荷待ちが含まれるため、荷主側の段取りが違反の発生に関わってきます。
Q. 荷主特別対策チームとは何をする組織ですか?
トラック運転者の長時間労働を是正するため、令和4年12月から都道府県労働局に編成されている体制です。長時間の恒常的な荷待ちを発生させないこと等について、発着荷主等に対して要請する取組を行っています。運送会社への監督指導と並行して、荷待ちを生んでいる荷主側にも改善を求める仕組みです。
Q. EC事業者は荷待ちを減らすために何ができますか?
受注の締め時間を、実際に処理できる作業量に合わせて設定することが出発点です。そのうえで出荷検品と伝票発行を集荷前に完了させ、荷物が揃った状態で集荷を迎えられるようにします。繁忙期は出荷波動を把握して作業を前倒しし、締め時間に間に合わない状態が常態化しないよう体制側を見直します。
Q. 配送費の上昇はこの先も続くのでしょうか?
拘束時間の是正が進むほど1台・1人が運べる量に上限がかかり、同じ量を運ぶための便数・車両・人員が増えます。その原価は運賃に反映されるため、単発の値上げではなく継続的な単価上昇として現れやすい構造です。運賃の原価を定義する議論も進んでおり、値上げを前提に梱包サイズや同梱設計で吸収する発想が現実的です。
この記事の監修者
重光翔太
株式会社KEYCREW 営業管掌取締役。ヤマト運輸にて本社営業部長を歴任し、物流業界で16年以上のキャリアを積む。法人営業・コスト最適化・業者比較選定を専門とし、累計1,500社以上のEC事業者への物流支援を手がけてきた。数百万件/日規模の出荷オペレーション管理や、6,000社が利用するフルフィルメントサービスの構築、温度帯コールドチェーンの大規模荷主向け事業設計など、業界でもトップクラスの実績を持つ。STOCKCREWでは営業戦略全体を統括し、「数字で語り、ROIで証明する」をモットーに、EC事業者の物流コスト最適化を推進している。