国交省が国際物流の実証輸送を公募、1輸送100万円|締切10月9日・輸入するEC事業者の判断材料
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仕入れているルートが1本しかない。その状態を、いつまで前提にできるでしょうか。国土交通省は2026年9月11日、「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送」の公募を開始しました。公募期間は10月9日まで、対象は日系荷主企業と日系物流事業者等で、1輸送につき原則100万円が調査協力費として支出されます。荷主企業も応募できる点が、輸入を行うEC事業者にとっての読みどころです。この記事では公募の中身を確認し、応募しない場合でも押さえておきたい論点を整理します。物流全体を外部に委託する場合の考え方は発送代行おすすめ25選にまとめています。
公募の概要|期間・対象・支出額
まず数字を押さえます。国土交通省物流・自動車局が公表した内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年9月11日(国土交通省 物流・自動車局 物流政策課 国際物流室) |
| 公募期間 | 2026年9月11日(金)〜10月9日(金) |
| 対象事業者 | 日系荷主企業、日系物流事業者等 |
| 実施時期 | 2026年10月〜2027年1月を目途 |
| 輸送の条件 | 日本を発地・着地・またはトランジットポイントとすること |
| 支出額 | 1輸送あたり原則100万円(複数コンテナの場合は2コンテナまでを上限に200万円) |
| 検証事項 | 輸送コスト、リードタイム、輸送品質、手続き、トレーサビリティ、越境時の税関手続き等 |
| 応募方法 | 応募様式に記載のうえEメールで提出 |
表1:実証輸送公募の概要(国土交通省の報道発表をもとにSTOCKCREW作成)
荷主企業も応募できる
対象事業者に「日系荷主企業」が明記されている点が、この公募の特徴です。物流事業者だけの話ではありません。海外から商品を仕入れて国内で販売しているEC事業者は、荷主として応募の検討対象に入ります。応募様式も荷主企業用と物流事業者等用の2種類が用意されています。
支出額の建て付け
金額の条件は報道発表に明記されています。
一輸送につき原則として100万円を調査協力に係る費用として支出しますが、複数コンテナの場合は2コンテナまでを上限に200万円を支出します。
あわせて「応募件数が少ない場合、支給金額の調整を行う可能性がございます」とも書かれています。全額が確約された補助金ではなく、調査への協力費という位置づけです。この性格は、設備投資を対象とする省力化投資補助金や標準仕様パレット補助金とは性質が異なります。
対象となる4つの実証類型
実証輸送は4つの類型のいずれかに当てはまる必要があります。
既存を磨く2類型
[1]と[2]は、すでにあるルートを対象にします。[1]は過去に検討したBCPルートについて、コスト高・所要日数・制度上の制約という具体的な課題の改善を図る実証です。「調べたが高くて見送った」ルートが対象になりうるという意味で、実務的な設計になっています。
[2]は既存ルートの使い方を変える類型です。定期運行、複数荷主による共同輸送、複数コンテナの輸送が例示されています。1社では量がまとまらないという理由でスポット輸送に留まっている事業者にとっては、共同輸送が現実的な選択肢として提示された形です。共同配送の考え方そのものは国内でも進んでおり、フェリー・RORO・内航コンテナの航路別積載率のように、積載率を上げる方向で政策が動いています。
新しく引く2類型
[3]は日本をトランジットポイントとする国際複合輸送ルートの開発です。例としてSea & Air(海上輸送と航空輸送の組み合わせ)が挙げられています。海上より速く、航空より安い中間解を作る発想です。国際輸送費の水準は国際輸送コストの上昇局面と越境EC出荷で整理したとおり、単価だけでは判断しにくい状況が続いています。
[4]は既存ルートの代替となる新規ルートです。新規性が認められることが条件で、4類型のなかでは最もハードルが高い枠になります。
なぜ国がルートの多元化を進めているのか
報道発表は、背景として国際情勢の悪化や気候変動による国際的なサプライチェーンの混乱を挙げています。特定のルートに依存した状態では、1か所の詰まりが供給全体を止めるという問題意識です。
単発の施策ではない
この実証輸送は、国交省が外部委託して実施している「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証調査および官民コンソーシアムの運営」の一環と位置づけられています。2026年8月には国際物流の官民コンソーシアムが開催されており、課題共有の場と実証の場が並行して動いている構図です。政策の流れ全体は国際物流の多元化・強靱化が加速する2026年で整理しました。
越境の制度環境そのものが動いている
ルートの話と並行して、越境取引の制度側も変化が続いています。少額免税の見直しは越境ECの少額免税が世界で終わる、米国向けの動きは米国10%追加関税で変わる日本越境EC戦略で扱っています。ルート・関税・通関手続きの3つが同時に動いているというのが2026年の状況です。年間の制度変更はEC事業者の2026年度 制度変更・コスト増カレンダーに並べてあります。
輸入するEC事業者が読み取る3つの論点
応募するかどうかとは別に、この公募からは実務に使える情報が3つ読み取れます。
論点1|検証事項がそのまま比較の物差しになる
公募では検証事項として、輸送コスト、リードタイム、輸送品質、輸送の際の手続き、トレーサビリティ、越境時の税関手続きが挙げられています。これは国がルートを比べるときに見ている項目です。自社が仕入ルートを比較するときの物差しとしても、そのまま使えます。
- 輸送コスト——運賃だけでなく、付帯費用まで含めた総額で比べます。
- リードタイム——平均日数と、ぶれ幅の両方を記録します。
- トレーサビリティ——荷物が今どこにあるかを、どの粒度で追えるかを確認します。
- 越境時の税関手続き——書類の準備にかかる社内工数も含めて評価します。
このうちコストとリードタイムは比較的すぐ数字にできますが、手続きとトレーサビリティは記録を取り始めないと比べられません。輸入1件ごとに、書類作成に要した社内工数と、荷物の所在を確認できなかった日数を残しておくと、半年後には十分な比較材料になります。
通関そのものの流れは通関とは?越境ECで必須の手続きの流れと必要書類と輸入通関手続きの流れと必要書類にまとめています。関税の計算はEC輸入の関税計算 実務ガイドが実務の手順です。税額そのものの算出方法は税関の関税・消費税等の税額計算方法、品目ごとに必要な手続きの有無はJETROの商品ごとの輸出入手続きで一次情報を確認できます。ルートを変えても、品目に紐づく規制は変わりません。先に品目側を確定させておくほうが、後の判断が速くなります。
論点2|共同輸送が政策的に後押しされている
[2]の類型に「複数荷主による共同輸送」が明記されたことは、量がまとまらない中小のEC事業者にとって意味があります。単独ではコンテナ1本を埋められない場合でも、同じ産地・同じ航路で仕入れている事業者と組む構成が、政策の枠内で評価されるということです。
フォワーダーの選定はこの実現可否を左右します。中国からの輸入であれば中国輸入向けフォワーダー選定ガイド、輸入ビジネス全体の組み立ては中国輸入ビジネス実務ガイドに判断材料を置いています。
論点3|在庫の置き方が先に決まっていないと動けない
ルートを増やしても、入ってきた在庫を置く場所と、置いたあとの引当ルールが決まっていなければ機能しません。リードタイムが異なる複数ルートを併用すると、同じSKUが異なるタイミングで入荷します。ロット管理と先入れ先出しの運用が曖昧なままだと、古い在庫が滞留します。
もう1つ見落とされやすいのが入荷のばらつきが保管料に効いてくる点です。ルートを増やすと、まとまって入る月と薄い月の差が大きくなります。坪単価で契約している場合は、ピーク時の在庫量に合わせて枠を押さえることになるため、平均では説明できないコストが乗ります。従量制と固定制のどちらが合うかは、ルート構成を変えた時点で見直すのが筋です。
関税と消費税の支払いタイミングを動かしたい場合は保税倉庫の仕組みが選択肢になります。保管そのものの料金構造はEC倉庫の保管料4方式を徹底比較で比べられます。倉庫を東西どちらに置くかという論点はEC倉庫は東日本と西日本のどちらに置くべきかで扱いました。輸入港からの内陸輸送距離が変わるため、仕入ルートの構成とあわせて考える余地があります。
応募しない事業者が今日からできること
実証輸送への応募は、時期も体制も限られます。応募しない前提でも、「今のルートが止まったら何が起きるか」を1枚にまとめておくことには意味があります。
仕入ルートの棚卸し
- ルート別の依存度——仕入金額のうち、どのルートが何割かを出します。
- 代替の有無——止まったときに使える別ルートが、机上でもよいので存在するか。
- 在庫の持ち日数——ルートが止まってから欠品するまでの日数を把握します。
在庫の持ち日数は在庫回転日数(DOI)の考え方で数値化できます。安全在庫の積み方は安全在庫の逆説で扱った非対称性の観点が役に立ちます。
商品データ側の準備
ルートを切り替えるとき、実務で止まりやすいのは書類です。HSコード・原産国が商品マスタに入っていないと、通関書類の作成がその都度手作業になります。STOCKCREWのシステムでも、海外発送を有効にする場合はHSコード・原産国・大分類・中分類(危険物有無)の入力が必要です。調べ方はHSコードの調べ方ガイドにまとめました。
越境の出荷側を含めて委託先を探すなら越境EC×発送代行の始め方と業者選定と海外発送代行サービスの選び方が比較の起点になります。見積書の読み方は発送代行の見積書を項目別に読み解く7つのチェックポイントに整理してあります。
まとめ:ルートは「増やす」のではなく「切り替えられる」状態にする
国土交通省は2026年9月11日、国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送の公募を開始しました。公募期間は10月9日まで、対象には日系荷主企業が含まれ、1輸送あたり原則100万円(複数コンテナは2本まで上限200万円)が支出されます。対象は4類型で、既存ルートの改善と新規ルートの開発の両方が含まれます。
応募を検討する事業者は、実施時期が2026年10月〜2027年1月を目途とされている点から逆算して動く必要があります。応募しない事業者にとっても、公募が示す検証事項——コスト、リードタイム、輸送品質、手続き、トレーサビリティ、税関手続き——は、自社の仕入ルートを点検する物差しとして使えます。ルートの本数を増やすことより、いざというときに切り替えられる状態を作っておくことが、ここでの実務的な目標になります。国内側の物流設計を含めて見直すなら発送代行おすすめ25選とEC物流完全ガイド、サービスの料金と作業範囲はSTOCKCREW完全ガイドに整理しています。個別の見積もりが必要な場合はお問い合わせ、先に条件を確認したい場合はサービス資料のダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 国際物流の実証輸送の公募はいつまでですか?
A. 公募期間は2026年9月11日(金)から10月9日(金)までです。実証輸送そのものは2026年10月から2027年1月を目途に実施することが条件とされています。応募は所定の応募様式に記載のうえ、国土交通省の担当宛にEメールで提出する形式です。
Q. EC事業者でも応募できますか?
A. 対象事業者は日系荷主企業、日系物流事業者等とされており、荷主企業が明記されています。海外から商品を仕入れて国内で販売しているEC事業者は荷主に当たるため、条件を満たせば検討対象になります。応募様式も荷主企業用と物流事業者等用の2種類が用意されています。
Q. いくら支払われるのですか?
A. 1輸送につき原則として100万円が調査協力に係る費用として支出されます。複数コンテナの場合は2コンテナまでを上限に200万円です。ただし応募件数が少ない場合は支給金額の調整を行う可能性があるとされており、全額が確約された補助金ではなく調査協力費という位置づけです。
Q. どのような輸送が対象になりますか?
A. 日本を発地・着地またはトランジットポイントとすることが前提で、4つの類型が示されています。過去に検討したBCPルートの深化、既存ルート活用の高度化、日本をトランジットポイントとした新たなルート開発、既存ルートに代わる新たな国際物流ルートの開発です。
Q. 応募しない場合、この発表から何を読み取ればよいですか?
A. 検証事項として挙げられている項目が参考になります。輸送コスト、リードタイム、輸送品質、輸送の際の手続き、トレーサビリティ、越境時の税関手続きの6点です。自社の仕入ルートを比較するときの評価軸として、そのまま流用できます。
Q. ルートを増やす前に社内で準備することはありますか?
A. 商品マスタにHSコードと原産国を入れておくことが先決です。ルートを切り替えるときに実務が止まりやすいのは通関書類の準備で、商品データが揃っていないと毎回手作業になります。あわせて、仕入ルート別の依存度と在庫の持ち日数を把握しておくと、切り替えの判断が速くなります。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。