国際郵便約款が2027年1月1日に変更、保険付は書類と小包に限定|越境ECの発送手段と補償を見直す
- EC・物流インサイト
この記事は約13分で読めます
海外発送に日本郵便の国際郵便を使っているなら、補償の当て方が来年から変わります。総務省は2026年9月14日、日本郵便株式会社から申請のあった国際郵便約款の変更を認可しました。実施予定日は2027年1月1日です。背景にあるのは2025年9月の万国郵便連合(UPU)大会議における万国郵便条約の改正で、国際返信切手券の廃止、保険付の対象を書類のみの優先通常郵便物と小包に限定、通常郵便物の大きさ・重量上限の変更などが含まれます。この記事では認可された変更点を確認し、越境ECの発送手段と補償をどう見直すかを整理します。出荷の委託先を含めた全体像は発送代行おすすめ25選にまとめています。
総務省が9月14日に認可|実施は2027年1月1日
まず手続きの流れを押さえます。郵便約款の変更は郵便法第68条第1項に基づく認可事項で、日本郵便が申請し、総務省が情報通信行政・郵政行政審議会に諮問したうえで認可します。今回は2026年9月14日に答申を受け、同日付で認可されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 認可日 | 2026年9月14日(総務省 情報流通行政局 郵政行政部 郵便課 国際企画室) |
| 実施予定日 | 2027年1月1日 |
| 根拠 | 郵便法第68条第1項に基づく郵便約款の変更認可 |
| 背景 | 2025年9月のUPU大会議における万国郵便条約および同条約施行規則の改正 |
| 主な変更 | 国際返信切手券の廃止/保険付の対象限定/通常郵便物の大きさ・重量上限の変更/イランの留保の反映/受取通知の取扱い廃止 |
| 詳細資料 | 新旧対照表(別添) |
表1:国際郵便約款の変更認可の概要(総務省の報道資料をもとにSTOCKCREW作成)
実施まで1年以上ある
認可から実施まで15か月以上あります。いま慌てて運用を変える必要はありませんが、2027年の年始から適用されるため、年末年始の繁忙期の直後に切り替わる点は頭に入れておきたいところです。海外向けの出荷ルールを年単位で見直しているなら、次の見直しのタイミングで反映しておくと手戻りが少なくなります。越境ECの立ち上げから見直しまでの流れは越境ECの始め方ガイドに整理しました。
保険付が「書類のみの優先通常郵便物と小包」に限定される
越境ECにとって実務的な影響がいちばん大きいのは、この変更です。国際郵便における商品体系の簡素化を図るため、保険付の対象が絞り込まれます。
保険付は書類のみを包有する優先通常郵便物及び小包に限定されることとなった。
補償の設計を先に決めておく
保険付は、万一の紛失・破損に備えて申し出た金額の範囲で損害賠償を受けられる扱いです。対象が限定されるということは、これまで保険付で守っていた荷物の一部が、その方法では守れなくなる可能性があることを意味します。
高額品を扱っているなら、補償の当て方は次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 発送手段側の補償で賄う——クーリエや国際宅急便など、サービスに付帯する損害賠償の範囲で対応します。
- 貨物保険を別に手当てする——発送手段とは切り離して保険を掛けます。単価の高い商材ではこちらが基本になります。
- 補償の上限に収まる単位で分ける——1件あたりの申告価格を下げるために出荷を分割する方法です。送料は増えます。
どれを選ぶかは商材単価と出荷件数で変わります。発送手段ごとの補償と使い分けはクーリエとEMS・フォワーダーの違いとDHL Expressの仕組みと料金で比較しています。
イランの留保が示す「誰が請求できるか」の論点
あわせて、万国郵便条約の改正に際してイラン・イスラム共和国が提出した留保が約款に反映されます。受取人に対する賠償の責任を拒絶し、賠償金の支払いを差出人のみに限定できるという内容です。差出人が自己の権利を放棄した場合に受取人へ請求権が移転すると誤って判断してしまう支障が生じないよう、約款に明記されます。
特定国向けの話ではありますが、「事故が起きたとき誰が請求できるのか」は仕向地によって違いうるという一般論として読んでおく価値があります。取引条件の決め方はインコタームズ2020 EC実務早見表に判断フローがあります。
実務では、購入者からの「届かない」という申し出に対して、どこまでを自社が負担し、どこからを発送手段の補償に回すかを事前に決めておくことが効きます。返金の基準と補償の範囲がずれていると、補償が下りない分をすべて自社が被ることになります。約款の変更をきっかけに、この線引きを書面で確認しておくと、実施日を迎えてから慌てずに済みます。
国際返信切手券の廃止と受取通知の取扱い終了
2つめの変更は、国際返信切手券(IRC)の廃止です。これは海外の相手に返信用の切手代を負担して送るための券で、郵便を使った国際的なやりとりで用いられてきました。
廃止の理由は需要の減少
総務省の資料では、郵便利用の世界的な減少にともない国際返信切手券の需要も近年大幅に減少したことを受け、2025年9月のUPU大会議で万国郵便条約および同条約施行規則が改正され、廃止が決まったと説明されています。日本郵便もこれを受けて廃止することとしました。
EC事業者の日常業務で国際返信切手券を使っている例は多くありませんが、海外の取引先とサンプルや書類を郵便でやりとりしている場合は確認しておくとよい項目です。
通常郵便物の受取通知も終了
3つめは受取通知の取扱いです。通常郵便物に係る受取通知は2024年12月31日に廃止されていましたが、附則で当面の取扱いを一部継続していました。今回、関係者との調整が整ったことから、この継続分も廃止されます。配達の証跡を受取通知で取っていた運用があれば、追跡サービスなど別の手段への置き換えが必要になります。
配達の証跡は、越境ECではチャージバックや「届いていない」という申し出への対応で効いてきます。国内側の送り状・荷札の扱いは荷札とは?送り状・伝票との違いと書き方に整理しました。
通常郵便物の大きさ・重量上限が変わる
4つめは規格の変更です。郵便物の区分に係るオペレーション実態を踏まえ、UPU大会議で条約と施行規則が改正されました。
変わるのは2点
- 書類を包有する通常郵便物——大きさの規定および重量上限が変更され、「巻物体のもの」の大きさが削除されます。
- 小包郵便物——大きさの最小限から「巻物体のもの」が削除されます。
「巻物体のもの」は、ポスターや図面のように筒状に巻いた形状を指す区分です。この規定が整理されることで、筒状の荷姿を前提にした梱包は、規格の読み替えが必要になります。ポスター・図面・布製品などを海外に送っている場合は、実施前に日本郵便の案内を確認しておく必要があります。
具体的な数値は新旧対照表にある
変更後の寸法や重量上限の具体的な数値は、認可の報道資料本文には記載がなく、別添の新旧対照表に示されています。本記事では確認できた範囲を超える数値は記載していません。実際の梱包設計に落とすときは、日本郵便が公表する正式な規格を確認してください。参考として、国際スピード郵便(EMS)の基本情報は日本郵便「EMS(国際スピード郵便)」にまとまっています。EMSそのものの使いどころはEMS(国際スピード郵便)徹底解説で扱いました。
なお商品そのものが送れるかどうかは、規格とは別に輸出入の規制で決まります。品目別の手続きはJETRO「商品ごとの輸出入手続き」が入口になります。通関の基本は通関とは?越境ECで必須の手続きの流れと必要書類、関税の計算は関税の仕組みと計算方法とEC輸入の関税計算 実務ガイドに手順があります。
越境ECの発送手段を並べ直す
ここまでの変更は、すべて日本郵便の国際郵便を使っている場合の話です。まず自社がどの手段で送っているかを確認するところから始めます。
STOCKCREWの国際配送は国際宅急便を使っている
委託先によって使う手段は違います。STOCKCREWの国際配送は、ヤマト運輸の国際宅急便を利用しています。そのため発送可否や荷物の取扱条件はヤマト運輸の規定に準じており、今回の国際郵便約款の変更による直接の影響は受けません。国内区間をヤマト運輸、海外区間(通関から海外配送)をヤマト運輸提携パートナーのUPSが担当する構成で、200か国以上へ発送できます。
ただし郵便とは別の制約があります。お届け先の国・地域や、ご依頼主・お届け先が法人か個人かによっては発送できない場合があり、ご依頼主またはお届け先のどちらか一方でも個人の場合、書類以外の荷物を発送できない国があります。海外向けの受注登録では商品の単価入力が必須で、HSコードの事前登録も必要です。サービスの範囲はSTOCKCREW完全ガイドに、海外発送を含む委託の考え方は海外発送代行とは?越境ECの配送手段と業者選定にまとめています。
手段ごとの向き不向き
| 手段 | 今回の約款変更 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 国際郵便(EMS・小形包装物等) | 対象(保険付・規格・受取通知) | 小型・軽量で単価が高くない商材 |
| クーリエ(DHL等) | 対象外 | リードタイムを優先する出荷、書類・サンプル |
| 国際宅急便(ヤマト+UPS) | 対象外 | 国内出荷と海外出荷を1か所にまとめたい場合 |
| 海上輸送・混載 | 対象外 | まとまった数量の在庫移動 |
表2:発送手段と今回の変更の関係(STOCKCREW作成)
越境ECは制度変更が続いている
越境ECの周辺では、ここ1年ほど制度変更が連続しています。米国向け国際郵便の関税ルールは米国向け国際郵便が従価税のみにと米国宛てEMSが引受再開で、少額免税の扱いは越境ECの少額免税が世界で終わるで追っています。輸入側では税関の輸入差止が上半期最高のようにリスクが上がっており、「送れるか」だけでなく「止められないか」も見る必要があります。日本郵便側の新サービスは日本郵便「UGXプライム」開始で扱いました。輸送コストの変動要因は国際輸送コストの上昇局面と越境EC出荷に整理しています。
出荷単位を見直すという打ち手もあります。1件ずつ国際便で送るのをやめ、まとまった数量を現地へ移してから配るかたちに変えると、1件あたりの輸送コストと補償リスクの両方が下がります。輸入側で在庫を持つ場合の考え方は保税倉庫とは?関税・消費税を繰り延べる仕組みに、国をまたいだ供給網の動向は国際物流の多元化・強靱化が加速する2026年にまとめました。
まとめ:影響を受けるのは「郵便を使っている事業者」
要点は3つです。第一に、総務省が2026年9月14日に国際郵便約款の変更を認可し、実施は2027年1月1日です。第二に、内容は万国郵便条約の改正を受けたもので、保険付が書類のみを包有する優先通常郵便物と小包に限定されるほか、国際返信切手券の廃止、通常郵便物の大きさ・重量上限の変更、受取通知の取扱い廃止が含まれます。第三に、影響を受けるのは日本郵便の国際郵便を使っている事業者で、クーリエや国際宅急便を使っている場合は今回の変更の対象外です。
やることは「自社がどの手段で送っているかを確認し、郵便を使っているなら補償の当て方を決め直す」に尽きます。実施まで1年以上あるため、年次の見直しに組み込むかたちで十分間に合います。海外発送を含めた委託先の選び方は発送代行おすすめ25選とEC物流完全ガイドに、STOCKCREWの対応範囲はSTOCKCREW完全ガイドにまとめました。料金は料金ページで公開しており、対象国や商材ごとの可否はお問い合わせページから確認できます。検討用の資料はサービス資料にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q. 国際郵便約款の変更はいつから実施されますか。
A. 2027年1月1日の予定です。総務省が2026年9月14日に日本郵便からの申請を認可しました。認可から実施まで1年以上あるため、すぐに運用を変える必要はありませんが、年末年始の繁忙期の直後に切り替わる点は留意してください。
Q. 保険付はどう変わりますか。
A. 国際郵便における商品体系の簡素化のため、保険付の対象が書類のみを包有する優先通常郵便物および小包に限定されます。これまで保険付で補償していた荷物の一部は、別の方法で補償を手当てする必要が出る可能性があります。
Q. 高額品の補償はどうすればよいですか。
A. 発送手段に付帯する損害賠償の範囲で対応する、貨物保険を別に手当てする、1件あたりの申告価格が補償上限に収まるよう出荷を分割する、の3つが基本の選択肢です。商材単価と出荷件数によって適した組み合わせが変わります。
Q. 国際返信切手券はなぜ廃止されるのですか。
A. 郵便利用の世界的な減少にともない、国際返信切手券の需要も近年大幅に減少したためです。2025年9月のUPU大会議で万国郵便条約および同条約施行規則が改正されて廃止が決まり、日本郵便もこれを受けて廃止することとしました。
Q. 発送代行を使っている場合も影響を受けますか。
A. 委託先がどの手段で海外へ送っているかによります。STOCKCREWの国際配送はヤマト運輸の国際宅急便を利用しており、国内区間をヤマト運輸、海外区間をヤマト運輸提携パートナーのUPSが担当するため、今回の国際郵便約款の変更による直接の影響は受けません。
Q. 通常郵便物のサイズや重量はどのくらい変わりますか。
A. 変更後の具体的な数値は総務省の報道資料本文には記載がなく、別添の新旧対照表に示されています。梱包設計に反映する際は、日本郵便が公表する正式な規格を確認してください。あわせて「巻物体のもの」の規定が整理されるため、筒状の荷姿を使っている場合は読み替えが必要です。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。