製品安全誓約の対象に労働安全衛生法の保護具9品目が追加|モール出品者が点検する商品マスタと入荷検品
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自社の商品ページが、ある日モールから削除される。その引き金になる製品の範囲が、2026年9月10日に広がりました。消費者庁は同日、製品安全誓約(日本国)の対象製品に労働安全衛生法の譲渡等制限機械等9品目と石綿含有製品を追加すると公表しています。防じんマスク、保護帽、墜落制止用器具といった作業用の保護具が対象に入ったことで、工具・作業用品を扱うEC事業者は無関係ではなくなりました。この記事では、追加された範囲を正確に確認し、何が削除の対象になり、商品マスタと入荷検品で先に何ができるのかを整理します。物流を外部に委託する場合の全体像は発送代行おすすめ25選にまとめています。
何が追加されたのか|労働安全衛生法の9品目と石綿含有製品
消費者庁が2026年9月10日に公表した資料によると、今回の追加は厚生労働省が所管する労働安全衛生法の枠組みから入ってきました。これまで製品安全誓約に参加していた厚労省の法令は、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、麻薬及び向精神薬取締法、医薬品医療機器等法の3本でしたが、ここに4本目が加わった形です。
系統1:石綿含有製品(疑いを含む)
1つ目は石綿を含有する製品です。公表資料では、対象を次のように示しています。
石綿含有製品(疑いを含む。)
注目すべきは「疑いを含む」という括弧書きです。石綿の含有が確定していなくても、疑いの段階で対象になります。中古の建材・断熱材・古い工具類など、製造年が古い商材を扱っている場合は、この一文の射程に入る可能性を意識しておく必要があります。中古品・リユース品の在庫管理についてはEC在庫管理の基本と改善方法で扱っている考え方が土台になります。
系統2:労働安全衛生法第42条の譲渡等制限機械等9品目
2つ目が今回の実質的な本体です。労働安全衛生法第42条は、一定の機械等について、構造規格を具備しないものの譲渡・貸与・設置を禁じています。今回追加されたのは、この譲渡等制限機械等のうち9品目です。
| # | 追加された品目 | EC上で想定される売り場 |
|---|---|---|
| 1 | 防じんマスク | 作業用品・安全保護具 |
| 2 | 防毒マスク | 作業用品・塗装用品 |
| 3 | 絶縁用保護具 | 電気工事関連 |
| 4 | 絶縁用防具 | 電気工事関連 |
| 5 | 保護帽 | ヘルメット・防災用品 |
| 6 | 電動ファン付き呼吸用保護具 | 作業用品・電動ツール周辺 |
| 7 | 研削盤、研削といし及び研削といしの覆い | 工具・DIY用品 |
| 8 | 墜落制止用器具 | 高所作業・アウトドア周辺 |
| 9 | チェーンソー(内燃機関を内蔵、排気量40cm³以上) | 園芸・林業用品 |
表1:製品安全誓約に新たに加わった9品目(消費者庁の公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
売り場の観点で見ると、明確に業務用のカテゴリだけではありません。保護帽(ヘルメット)と墜落制止用器具は防災・アウトドアの棚に並ぶことがあり、チェーンソーは園芸用品として一般消費者にも売られています。「うちは作業用品店ではないから関係ない」と切り捨てる前に、在庫の中身を見てから判断するのが安全です。工具・DIY用品ECの発送代行実務ガイドで扱っている商材群とは特に重なりが大きい領域です。
製品安全誓約とは|9運営事業者・15モールの自主的な取組
そもそも製品安全誓約は法律そのものではありません。消費者庁は制度の性格を次のように説明しています。
製品安全に係る法的枠組みを超えた「官民協働の自主的な取組」です。
法律の枠を超えているという意味
「法的枠組みを超えた」という部分が、出品者にとっては最も重要です。法律上の販売禁止に該当しなくても、誓約に基づいてモール側が出品を削除しうるということだからです。行政処分を受けたわけではないのに商品ページが消える、という事態は、この構造から生まれます。制度変更が出荷や売上に響くタイミングはEC事業者の2026年度 制度変更・コスト増カレンダーで年間の並びとして把握しておくと、都度の対応が楽になります。
署名しているモールと規制当局
誓約に署名しているのは9つのオンラインマーケットプレイス運営事業者・15モールです。主要な国内モールはほぼ網羅されています。
| 署名した運営事業者 | 運営モール |
|---|---|
| アマゾンジャパン合同会社 | Amazon.co.jp |
| 楽天グループ株式会社 | 楽天市場、楽天ラクマ |
| LINEヤフー株式会社 | Yahoo!ショッピング、Yahoo!オークション、Yahoo!フリマ、LINEギフト |
| 株式会社メルカリ | メルカリ、メルカリShops |
| eBay Japan 合同会社 | Qoo10 |
| auコマース&ライフ株式会社 | au PAY マーケット |
| 株式会社モバオク | モバオク |
| 三井不動産株式会社 | Mitsui Shopping Park &mall、三井アウトレットパーク オンライン |
| Whaleco Japan 株式会社 | Temu |
表2:製品安全誓約に署名したオンラインマーケットプレイス運営事業者(2026年9月10日時点・消費者庁の公表資料をもとにSTOCKCREW作成)
規制当局の側は、消費者庁・総務省消防庁・厚生労働省・経済産業省・国土交通省の5省庁です。今回の追加で、厚生労働省が所管する法令は4本になりました。複数モールに同じ商品を出している事業者ほど、1つの要請が同時多発的に効いてきます。モールをまたいだ在庫と商品情報の持ち方はShopify×楽天市場マルチチャネル物流設計ガイドで整理しています。楽天市場に出店している場合の物流の選択肢はRSLとSTOCKCREWの料金・機能比較、AmazonはFBAからの移行手順ガイド、Yahoo!ショッピングはYahoo!ショッピング向け発送代行の選び方にそれぞれまとめました。
出品が削除されるまでの流れと「2営業日以内」
製品安全誓約には、署名事業者が守る統一的な規律として「出品削除は2営業日以内に実施」が置かれています。規制当局が削除を要請してから、実際に商品ページが消えるまでの時間が決まっているということです。
削除要請の件数と、自社が対象になるかは別の話
実際の運用量は、消費者庁が毎月公表している重要業績評価指標の速報版で確認できます。直近の要請件数と削除実績は製品安全誓約のKPI速報とモール9社の削除状況に数値をまとめました。
結論から言えば、現時点の運用量は限定的です。ただし件数が少ないことと、自社が対象にならないことは別の話です。要請が月に1件であっても、それが自社の主力SKUに当たれば、その商品の売上はその日から止まります。誤出荷のように事後に取り返せる種類のトラブルとは、性質が違うと考えておくのが安全です。
KPIの対象になるのは2026年9月10日から
今回追加された9品目と石綿含有製品について、KPIの対象開始時期は2026年9月10日と明記されています。公表と同時に運用が始まったということです。猶予期間は設けられていません。在庫として持っている商品が対象に該当するかどうかは、公表日を基準に判断することになります。
自社に関係があるかを3つの質問で判定する
追加されたとはいえ、9品目を扱っていれば即座に削除対象になるわけではありません。判定は次の順序で行うのが実務的です。
- 労働安全衛生法第42条の譲渡等制限機械等を扱っているか——表1の9品目に該当するSKUが在庫にあるかを洗い出します。
- その製品は構造規格を具備しているか——具備しないことが厚生労働省の試験等で確認されたものだけが対象です。
- 石綿含有の疑いがある在庫はないか——製造年が古い商材・中古品・海外調達品が該当しやすい領域です。
質問1|9品目に該当するSKUを洗い出す
まずはSKU単位で棚卸しします。商品名だけで判断すると漏れます。たとえば「防塵マスク」「粉じんマスク」のような表記ゆれ、保護帽を「ヘルメット」「安全帽」として登録しているケース、チェーンソーをブランド名だけで登録しているケースなどです。商品名ではなく、その製品が何の規格に基づいて作られているかで切るのが確実です。棚卸しの進め方そのものはEC倉庫の棚卸の進め方と在庫差異の潰し方にまとめています。
質問2|構造規格を具備しているかを確認する
ここが今回の範囲を決める中心です。対象は「厚生労働省による試験等により、構造規格を具備しない事実が確認された」ものに限られます。つまり、規格に適合している製品を正規に仕入れて売っている限り、9品目を扱っていること自体が問題になるわけではありません。
確認の実務としては、仕入先に対して型式検定合格標章や規格適合の表示があるかを書面で確認しておくことになります。国内正規流通品であれば表示は付されているのが通常です。逆に、海外モールから並行で仕入れたもの、表示の有無を確認していないもの、型番が特定できないものはリスクが残ります。並行輸入の扱いについては並行輸入とは?で論点を整理しています。
質問3|石綿含有の疑いがある在庫を切り分ける
石綿側は「疑いを含む」ため、判定の幅が広くなります。製造年が2006年以前の建材類、出所が追えない中古工具、成分表示のない輸入資材などは、疑いの対象になりうると考えて扱うほうが安全です。通関の手続きを経て入ってくる商材については、インボイスや成分証明の保管状況もあわせて点検しておくとよいでしょう。
商品マスタと入荷検品で先にできること
削除要請は突然来ます。事前に通知が届く工程は、誓約の枠組みに含まれていません。だからこそ、要請が来た瞬間に「どのSKUが該当するか」を数分で引ける状態にしておくことが、実務上の備えになります。
商品マスタに「規格」の属性を持たせる
多くのEC事業者の商品マスタは、商品名・JANコード・サイズ・重量までは持っていても、その製品がどの法令・規格の対象なのかを持っていません。今回のような追加があるたびに、商品名を目視で検索し直すことになります。
- 規格区分の列を追加する——労安法42条対象/電気用品安全法対象/該当なし、といった粒度で十分です。
- 危険物区分を埋める——海外発送を行う場合、商品登録時にHSコード・原産国・大分類・中分類(危険物有無)の入力が必要になります。国内販売しかしていなくても、この列を先に埋めておくと横断検索に使えます。
- 仕入先と型番を紐づける——要請が来たときに、同一型番の在庫を一括で特定できる状態にします。
HSコードの調べ方はHSコードの調べ方ガイドに手順をまとめています。商品情報の設計はEC物流完全ガイドで扱っている在庫データ設計の一部として考えると整理しやすくなります。
入荷検品で表示・刻印を確認する
もう1つは入荷検品の工程です。保護具類には、型式検定合格標章や規格適合の表示が製品本体または包装に付されています。入荷時にこの表示の有無を1項目として入れておけば、規格外品が在庫に入る前に止められます。同じ発想は玩具のSTマークのような業界自主基準のマークでも使えます。検品の判定基準を「マークの有無」という誰でも同じ結論になる形に落とすことが、工程として回るかどうかの分かれ目になります。
外部の発送代行に委託している場合は、標準の検品項目に含まれていないことが多い部分です。個別の検品ルールを指定できるかは業者によって差があるため、見積もりの段階で確認しておく項目になります。確認の観点は発送代行の見積書を項目別に読み解く7つのチェックポイントに整理しました。委託時の賠償範囲については発送代行の賠償・保険・リスク管理ガイドもあわせて目を通しておくと判断材料が揃います。
削除された場合に何が起きるかを先に決めておく
出品が削除されると、在庫はそのまま倉庫に残ります。売り場を失った在庫の保管料は発生し続けるため、返品・廃棄・別販路への振り替えのいずれを選ぶかを事前に決めておくと、判断が遅れません。保管コストの構造はEC倉庫の保管料4方式を徹底比較で、滞留した在庫の扱いは滞留在庫とは?原因・リスク・解消方法で扱っています。家電・電子機器のように規制が絡みやすいカテゴリの設計は家電・電子機器ECの物流設計パターンが近い事例になります。
まとめ:対象は「構造規格を具備しない事実が確認された」ものに限られる
2026年9月10日、製品安全誓約の対象製品に石綿含有製品(疑いを含む)と労働安全衛生法第42条の譲渡等制限機械等9品目が加わりました。KPIの対象開始は同日で、猶予はありません。ただし9品目については、厚生労働省の試験等で構造規格を具備しない事実が確認されたものに限られます。規格適合品を正規に仕入れて売っている限り、扱っていること自体が問題になるわけではないという点は、正確に押さえておく必要があります。
やるべきことは2つです。1つは商品マスタに規格区分の列を足し、要請が来たときに該当SKUを即座に引ける状態にすること。もう1つは入荷検品に表示確認を1項目加え、規格外品を在庫に入れないことです。どちらも今日から着手できます。物流全体の設計を見直すなら発送代行おすすめ25選とSTOCKCREW完全ガイド、物流用語と仕組みの全体像は物流完全ガイドが起点になります。料金や作業範囲の見積もりが必要な場合はお問い合わせ、先に条件を確認したい場合はサービス資料のダウンロードをご利用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 製品安全誓約に何が追加されたのですか?
A. 消費者庁は2026年9月10日、製品安全誓約(日本国)の対象製品に、石綿含有製品(疑いを含む)と、労働安全衛生法第42条に定める譲渡等制限機械等9品目を追加しました。9品目は防じんマスク、防毒マスク、絶縁用保護具、絶縁用防具、保護帽、電動ファン付き呼吸用保護具、研削盤・研削といし及びその覆い、墜落制止用器具、チェーンソー(内燃機関内蔵・排気量40cm³以上)です。
Q. 9品目を扱っていると出品が削除されるのですか?
A. 扱っていること自体が対象になるわけではありません。対象は、厚生労働省による試験等により構造規格を具備しない事実が確認された製品に限られます。規格に適合した製品を正規に仕入れて販売している限り、削除の対象にはなりません。型式検定合格標章などの表示があるかを仕入先に確認しておくと安心です。
Q. いつから対象になりますか?
A. 追加された製品について、重要業績評価指標(KPI)の対象開始時期は2026年9月10日と公表されています。公表と同日から運用が始まっており、猶予期間は設けられていません。
Q. どのモールが製品安全誓約に署名していますか?
A. 2026年9月10日時点で9つの運営事業者・15モールが署名しています。Amazon.co.jp、楽天市場、楽天ラクマ、Yahoo!ショッピング、Yahoo!オークション、Yahoo!フリマ、LINEギフト、メルカリ、メルカリShops、Qoo10、au PAY マーケット、モバオク、Mitsui Shopping Park &mall、三井アウトレットパーク オンライン、Temuです。
Q. 出品が削除されるまでどのくらい時間がありますか?
A. 製品安全誓約では、規制当局から出品削除要請を受けてから2営業日以内に削除するという統一的な規律が置かれています。出品者への事前予告はこの流れに含まれていないため、要請が出た時点で該当SKUを特定できる状態にしておくことが備えになります。
Q. EC事業者はまず何から手をつければよいですか?
A. 商品マスタに規格区分の列を追加し、労働安全衛生法第42条の対象かどうかをSKU単位で持たせることから始めてください。商品名は表記ゆれが起きるため、規格を基準に切るほうが確実です。あわせて入荷検品に型式検定合格標章などの表示確認を1項目加えると、規格外品が在庫に入る前に止められます。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。