公取委の緊急調査、石油関連の値上げで受注者の64.1%に影響|梱包資材の値上げ要請を据え置く前に
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段ボールや緩衝材、配送の値上げ通知が続き、「全部は受け入れられない」と返事を先送りにしていないでしょうか。公正取引委員会は2026年9月25日、「石油関連製品等の価格転嫁に関する緊急調査」の結果を公表しました。中東情勢による価格高騰について、受注者の64.1%が「影響があった」と回答しています。さらに、値上げを求められたのに協議せず価格を据え置いた発注者59名には、注意喚起文書が送られました。対象品目には包装資材が明記されており、資材や物流を外部から買うEC事業者は発注者の側に立ちます。本記事では、調査の数字を読んだうえで、値上げ要請を受けたときにやってはいけない対応と、進め方の手順を整理します。物流委託の全体像は発送代行おすすめ25選が土台になります。
緊急調査の概要|対象品目・期間・回答数
まず、調査の枠組みを押さえます。今回の緊急調査は、公取委が毎年行っている「価格転嫁円滑化・支払の適正化に関する調査」の一環です。令和8年2月以降の中東情勢で石油関連製品等の価格が上がったことを受け、影響を受けている中小受託事業者の支援を目的に、幅広い業種を対象として実施されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年9月25日 |
| 調査実施期間 | 2026年6月26日〜7月31日(ウェブアンケート調査・電話調査) |
| 調査対象行為の期間 | 2026年2月28日〜7月27日 |
| 調査対象 | 47業種・事業者15万名 |
| 回答数 | 27,622名(回答率18.4%)、電話調査275名 |
| 公取委の対応 | 協議せず据え置いた等と回答した発注者59名に注意喚起文書を送付 |
対象品目に「包装資材」が入っている
EC事業者にとって見逃せないのが、対象品目の範囲です。燃料だけでなく、樹脂などの原材料、出荷に使う副資材、製造やサービスで使う消耗品まで含まれています。
石油関連副資材:原材料以外で、製品の出荷に使用される副資材としての石油由来のフィルム、包装資材等
整理すると、次の4区分です。エネルギー(ガソリン・軽油・重油等)、石油製品原材料(ポリエチレン等の樹脂、溶剤、ゴム、塗料等)、石油関連副資材(石油由来のフィルム、包装資材等)、石油関連消耗品(潤滑油、切削油等)。緩衝材やOPP袋、ストレッチフィルム、配送車両の燃料は、いずれもこの範囲に入ります。資材価格の上昇局面そのものはナフサ高騰で梱包資材の値上げラッシュが本格化と企業物価7.2%上昇で梱包資材コストが上がるで追ってきました。
取適法の施行後、初めての大型調査
2026年1月1日には改正法である取適法(中小受託取引適正化法)が施行されています。公取委は今回の結果を受けて、取適法に基づく書面調査を令和8年度も実施する方針を示しました。物流委託との関係は取適法で物流委託が変わるにまとめています。
5つの数字で見る石油関連の価格転嫁
概要資料から、受注者側の回答を中心に5つの数字を拾います。
| 指標 | 数値 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 価格高騰の影響が「あった」 | 64.1% | 製造業・流通業では75%以上 |
| 申し出たが協議に応じてもらえなかった | 0.8% | 協議のテーブル自体はほぼ用意される |
| 協議の上、一部でも転嫁を受け入れてもらえた | 51.7% | 半数強は何らかの転嫁に成功 |
| 価格協議の申出をしていない | 38.5% | 力関係や商慣習で言い出せていない |
| コスト全体の要請受諾率 | 48.3% | 満額以上が26.9%ある一方、低い層も一定数 |
64.1%が「影響があった」と回答。(製造業及び流通業では、75%以上)
影響の中身は「利益の減少」と「出荷の遅れ」
影響の具体的な内容として最も多かったのは、エネルギーや原材料、副資材、消耗品の価格が上がって利益が減少した(約80%)という回答です。次いで、調達難のため出荷の抑制や納期の遅れが発生した(約40%)が続きます。資材が値上がりするだけでなく、手に入りにくくなって出荷に響くケースが4割に達している点は、在庫を持つEC事業者にも無関係ではありません。
言い出せない38.5%が問題の中心
協議を申し出れば、ほぼ応じてもらえる(拒否は0.8%)。それでも4割近くが申し出ていない。公取委は、その事情として発注者との力関係や、一定の時期にしか価格改定をしない商慣習を挙げています。発注者の側から見れば、「何も言ってこないから据え置きでよい」とは限らないということです。
「協議せず据え置く」が問題になる2つの行為
今回、59名の発注者に注意喚起文書が送られた根拠は、公取委が2022年2月16日に「よくある質問コーナー(独占禁止法)」で明確化した考え方です。取引上の地位が優越している事業者が、次のいずれかを行うと、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。
- 明示的に協議しないまま据え置く——労務費・原材料価格・エネルギーコスト等の上昇分を取引価格に反映する必要性について、価格交渉の場で明示的に協議することなく、従来どおりの価格に据え置くこと。
- 理由を文書で回答しないまま据え置く——相手方が引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面や電子メール等で回答することなく、従来どおりの価格に据え置くこと。
ポイントは、値上げを断ること自体が直ちに問題とされているわけではない点です。問われているのは「協議したか」「断る理由を文書で返したか」というプロセスです。
梱包資材の20%値上げ要請を「いずれ落ち着く」で据え置いた事例
公表された注意喚起事例の中に、梱包資材の取引があります。金属製品製造業の発注者が、令和8年2月から3月にかけて梱包資材の仕入先から取引価格を20%引き上げたいと要請を受けました。しかし、仕入先の調達価格はいずれ落ち着くだろうと考え、何ら協議することなく据え置いたというものです。
ほかにも、潤滑油や塗料の仕入先からの要請に対して「自社の顧客から値上げを認められていないので原資がない」として協議しなかった事例や、電話で「当面据え置き、数か月後に上げるつもり」と伝えただけで書面等の回答をしなかった事例が挙がっています。自社の売価に転嫁できないことは、協議を省略する理由にはならないと読むべきでしょう。
今後は事業者名の公表を伴う措置も
公取委は今後の方針として、価格転嫁が進んでいない業種について端緒情報を積極的に集め、独占禁止法上問題となる事案には事業者名の公表を伴う措置を採るなど厳正に対応するとしています。全都道府県の事業者に対する立入調査も進めており、その結果は今年中に公表される予定です。直近の勧告事例は「システム利用料」名目で一律1.1%を減額、公取委が勧告、荷主への立入調査は公取委が荷主105社を立入調査で扱いました。
EC事業者が「発注者」になる3つの場面
EC事業者は普段、モールや消費者に対して「売る側」です。しかし物流の周辺では、資材や作業を外から買う「発注者」の立場に立つ場面が少なくありません。
場面1:段ボール・緩衝材・袋を仕入れるとき
自社出荷の事業者は、段ボールやOPP袋、緩衝材を資材業者から直接買っています。今回の注意喚起事例とまさに同じ構図です。資材業者からの値上げ通知を受け取ったまま放置している場合は、協議の場を設けるところから始める必要があります。資材の選び方とコストの考え方はEC通販の梱包資材選定と費用最適化実務ガイドとEC事業者のための段ボール・梱包資材の選び方にまとめています。
場面2:配送や発送代行を委託するとき
運送会社や発送代行会社から、燃料費や資材費の上昇を理由に料金改定の申し入れを受ける場面もあります。燃料価格と配送費の関係は燃料補助金(激変緩和措置)の見直しとEC配送費への波及、運賃交渉の実態は標準的運賃の交渉率が90%に上昇で数字を追っています。荷主と物流事業者の取引ルールそのものは公正取引委員会が物流特殊指定を改正で扱いました。
場面3:流通加工や撮影などを外注するとき
セット組み・ラベル貼り・ギフト包装、商品撮影、梱包の委託作業も発注取引です。取適法の対象になるかは資本金区分や取引の内容で変わるため、自社の取引を一度棚卸ししておくと安心です。EC運営に関わる法律を工程ごとに見渡すならEC事業者が押さえるべき法律を工程別に整理が便利です。
値上げ要請を受けたときの対応手順
注意喚起事例と公取委の考え方を踏まえると、値上げ要請を受けたときの進め方は次の4段階に整理できます。
STEP 1〜2:根拠を聞き、協議の場を設ける
要請を受け取ったら、まず受領日と要請内容を記録します。次に、原材料価格や燃料費がどれだけ上がったのか、上昇の根拠を相手から聞く場をつくります。注意喚起事例には「引上げ開始まで日数がなく、要請文の提出もなかったので協議しなかった」というケースもありました。相手の準備が不十分でも、協議を省く理由にはなりません。
STEP 3〜4:結論を出し、文書で返す
全額受け入れ、一部受け入れ、見送りのいずれでも構いません。ただし見送る場合は、その理由を書面や電子メールで回答します。公表された好事例では、ビルメンテナンス業者が見積書の提出前に値上げを受け入れる旨をあらかじめ伝え、協議を円滑に進めた例が紹介されています。
見積の比較は協議の後に
値上げを機に他社見積を取ること自体は自由です。ただ、既存の取引先との協議を放置したまま乗り換えを進めると、同じ論点が残ります。比較の観点は発送代行の見積書を項目別に読み解く7つのチェックポイントと発送代行の隠れコスト完全マッピング、契約の更新時期にまとめて見直すならEC事業者の2026年度物流契約見直し完全チェックリストが使えます。
自社が転嫁を求める側に回るとき
EC事業者は発注者であると同時に、卸取引やOEMでは受注者にもなります。今回の調査は、その立場でも使える材料を含んでいます。
サプライチェーンの下流ほど転嫁が進みにくい
公取委は、サプライチェーンの段階別に見ると二次受注者・三次受注者以降の取引段階で要請受諾率が低く、価格転嫁が十分に進んでいない傾向があると指摘しました。小売や卸へ商品を納める立場にある事業者は、自社の位置を確かめたうえで、根拠資料をそろえて申し出るのが近道です。価格交渉の支援策は中小企業庁の取引適正化、価格交渉・価格転嫁のページに集約されています。大規模小売との取引については公取委が大規模小売と納入業者の取引を実態調査を参照してください。
転嫁の根拠は「1件あたり」で示す
取引先に値上げを申し出るときは、資材費や配送費の上昇を出荷1件あたりの金額に落として示すと話が通りやすくなります。転嫁の実務は物流費・労務費を転嫁する実務、コストの見える化はEC物流コストの可視化と削減実務ガイドが役立ちます。宅配運賃の上昇トレンドは宅配便値上げが止まらないで押さえられます。
料金が公開されている委託先は比較がしやすい
物流を委託する場合、料金表が公開されていると改定の前後を比べやすくなります。STOCKCREWは料金を公開しており、出荷の料金は資材費を含む形で設定しています。サービスの全体像はSTOCKCREW完全ガイドで確認できます。
まとめ:据え置くなら理由を文書で返す
公取委の緊急調査では、石油関連製品等の価格高騰について受注者の64.1%が影響ありと回答し、協議を申し出ていない受注者も38.5%いました。コスト全体の要請受諾率は48.3%で、協議せずに据え置いた等と回答した発注者59名には注意喚起文書が送られています。対象品目には包装資材が含まれ、梱包資材の20%値上げ要請を協議なく据え置いた事例も公表されました。
値上げを断ること自体が問題なのではなく、協議の場を設けること、見送るなら理由を書面や電子メールで返すことが求められています。まずは手元に届いている値上げ通知を洗い出し、未回答のものから協議を始めてください。
物流の委託先や料金体系をあわせて見直すなら、発送代行おすすめ25選とEC物流完全ガイドが比較の起点になります。STOCKCREWの料金やサービス内容について具体的に知りたい場合は、お問い合わせから出荷条件を伝えてご相談いただくか、資料ダウンロードで先に情報を集めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 公取委の「石油関連製品等の価格転嫁に関する緊急調査」とは何ですか?
A. 令和8年2月以降の中東情勢による石油関連製品等の価格高騰を受け、公正取引委員会がサプライチェーンにおける価格転嫁の状況を把握するために行った調査です。47業種・事業者15万名を対象に2026年6月26日から7月31日に実施され、27,622名が回答しました。結果は2026年9月25日に公表されています。
Q. 梱包資材も調査の対象に含まれますか?
A. 含まれます。対象の「石油関連製品等」には、燃料などのエネルギー、樹脂などの原材料に加え、製品の出荷に使う石油由来のフィルムや包装資材などの副資材、潤滑油などの消耗品が含まれています。公表された注意喚起事例にも、梱包資材の仕入先からの20%値上げ要請を協議せず据え置いたケースがあります。
Q. 値上げ要請を断ると独占禁止法違反になりますか?
A. 断ること自体が直ちに問題とされているわけではありません。取引上優越した地位にある事業者が、コスト上昇分の反映について明示的に協議せずに価格を据え置くこと、または相手方の引上げ要請に対して転嫁しない理由を書面や電子メール等で回答せずに据え置くことが、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあるとされています。
Q. 注意喚起文書は何名に送られましたか?
A. 受注者から協議を申し入れられたが、協議せずに取引価格を据え置いた等と回答した発注者59名に対し、優越的地位の濫用の未然防止の観点から注意喚起文書が送付されました。公取委は今後、独占禁止法上問題となる事案には事業者名の公表を伴う措置を採るなど厳正に対応するとしています。
Q. 受注者はどのくらい価格転嫁できているのですか?
A. 影響を受けた受注者の51.7%が、発注者と協議の上で一部でも価格転嫁を受け入れてもらえたと回答しました。コスト全体の要請受諾率は48.3%で、満額以上が26.9%ある一方、受諾率が低い層も一定数あり、高低に二極化しています。協議の申出をしていない受注者も38.5%いました。
Q. EC事業者はまず何をすればよいですか?
A. 資材業者や運送会社、発送代行会社などから届いている値上げ通知を洗い出し、未回答のものから協議の場を設けることです。受け入れるか一部受け入れるか見送るかを決め、見送る場合は理由を書面や電子メールで回答します。口頭で「当面据え置き」と伝えるだけの対応は、注意喚起事例と同じ形になるため避けてください。
この記事の監修者
北川七重
株式会社KEYCREW 管理部門の責任者。IT業界でシステムエンジニアとして約10年間、客先常駐・受託開発に従事した後、KEYCREWに入社。経理・労務・採用を統括し、業務の標準化や体制整備を通じて管理部門の強化を推進している。販管費の約7%削減を実現するなど、単純作業の外部化と社内リソースの最適化により「戦略的に動く管理部」の構築を目指す。日商簿記2級および応用情報技術者の資格を保有し、経理の専門知識とITスキルを兼ね備えた視点でEC事業者の会計・税務・制度対応に関する情報を発信。「凡事徹底/積小為大」を信条に、正確さと信頼感を重視した記事を執筆している。